【必見】なぜ、「スーパーシティ構想」が必要なのか?|政策担当者に聞く#01 内閣官房 間中 健介

Publinkのインタビューを掲載しています。

インタビュー

    『スーパーシティ構想』とは何なのか?

    未来投資戦略、スマートシティ、国家戦略特区、地方創生、Society5.0、、、
    国の成長戦略として立ち上がり、いまもなお推進されているプロジェクトの数々。

     

    そんな中、2018年の秋からそれらを全て包含したようなプロジェクトが議論されてきた。

    「スーパーシティ構想」。

     

    先端テクノロジーを駆使した未来の暮らしを実現した都市を創る構想。

    移動はもちろん自動運転で運転席もない。配達はドローンがしてくる。キャッシュレスだからお財布を持つ必要はなく、医療も教育も行政も遠隔に受けられる。

     

    自治体は、地域の差別化を図る政策の目玉として。

    企業も新たな市場形成や事業開発の機会を感じて。

    どうやってこの流れに乗ることができるか、虎視眈々と狙っている。

     

    今回は、そんな「スーパーシティとは何か?」「どのように実現していくのか?」「自治体、企業の関わりは?」といった疑問を内閣官房の間中 健介さんにお伺いします。

     

    目次

     

     

    『スーパーシティ構想』は、国家の成長戦略

    ー 間中さんの自己紹介をお願いします。

     

    2014年から、5年間に渡って内閣官房で成長戦略の企画立案に携わっています。
    ここでいう成長戦略というのは、安倍内閣発足時に立ちあげた「三本の矢」である『1)大胆な金融政策、2)機動的な財政政策、3)民間投資を喚起する成長戦略』の三本目のことですね。

     

    今回お話しするキーワードである「スーパーシティ構想」もその一つですね。

     

    ちなみに私自身の話をもう少しすると、慶應義塾大学SFC研究所の上席所員と、一般社団法人 働き方改革コンソーシアム(CESS)の理事長もしていて、そこでは長時間労働の是正ということだけでなく、「成長のための働き方改革」を中心として議論できる場づくりをしています。私自身は脱サラをして小規模ながら仲間を集めて事業をしてきた身ですので、既存の観念を超えて新しいチャレンジを望む企業や個人にとっての働き方の選択肢を増やしたいのです。

     

    ー 色々な側面で『日本の生産性という”係数”』を上げる活動をされているんですね。ずばり、「スーパーシティ構想」とは何なのでしょうか。

     

    一つのキーワードは「ショーケース」です。
    第4次産業革命のショーケースとなる最先端都市を創る構想です。ある有識者は「令和版のアゴラをつくることだ」と言っていました。みんなが夢を感じることができ、新しいチャレンジをしたくなるような社会をつくる構想とも言えます。

     

    ※アゴラとは…古代ギリシアのポリスに存在した広場で、市場・政庁などがあり、市民はここで政治,学芸を語りあって,集会をしたり、経済・日常生活の中心となった場所。

     

    スーパーシティ構想のポイント

    ~編集部にて取材をもとに制作~

     

    ー 2019年6月時点の国会では見送りになったとお聞きしていますが、現状どういったスケジュールで動いているのでしょうか。

     

    法案の扱いなど、政府全体と国会に関わることですのでわかりません。

     

    早期の構想スタートを待望する声はよく聞きます。2014年に本格始動した国家戦略特区は構想から法律成立、特区発足まで1年ほどでした。

     

    (※編集部追記:2019年8月28日の有識者懇談会にて「スーパーシティ構想」実現のための国家戦略特区法改正案を、秋の臨時国会に再提出する意向が示された)

     

    ~編集部にて取材をもとに制作~

     

    ー 公表資料だと「選定される自治体はごく少数」と聞いていますが、選定数は決まっているのでしょうか。

     

    政府の方針としては「ごく少数」を選定するということで議論がされています。ただ、それに限らず、チャレンジングな企業や自治体から、数十、数百の画期的な構想が生まれてくることが大事だと思います。

     

    ダイナミックな経済政策は、他の経済政策を牽引する

    ー 「スーパーシティ構想」とは国にとってどういう位置づけのプロジェクトなのでしょうか。

     

    省庁の政策担当者の説明とは違う説明をしますね。

    私は、成長戦略には『チャンスのすそ野が広い社会を創る』というミッションが必要だと思っています。私は小児がん患者と一緒に活動をすることがたびたびありますが、余命数か月と宣告された若者たちが将来の夢を語り、周囲の人たちに元気を与える姿を見ています。彼らが教えてくれた通り、誰もがいつでもチャレンジをすることができ、チャンスを得られるような社会にしたくて成長戦略に関わっています。

     

    それでは、国としてどうすればよいのでしょうか。

     

    一つの方法としては、国民と世界が期待感を持てるダイナミックな政策を立ちあげることだと思っています。
    例えば、トヨタグループでは何千個何万個のプロジェクトが日々動いています。
    その中で1990年代初頭に、世界初の量産ハイブリッド専用車を開発するという、当時で考えると非常に困難な構想が立ち上がりました。そして、1997年にプリウスが発売されます。
    『二酸化炭素を出さない車を作りたい』という大きな構想が立ち上がり、実現し、この一つのプロジェクトによってトヨタグループ全体に様々な価値がもたらされているのだと思います。

     

    政府のプロジェクトも何千個何万個もあります。成長戦略のなかにはフィンテック、データヘルス、キャッシュレス、コーポレートガバナンス、PPP/PFIなど多くの分野があり、その他にもスマートシティであったり、地方創生であったり、、、各プロジェクトがあるわけですが、それらを牽引し、全体を大きく後押しして、加速させる、更にダイナミックな政策が必要だということで、2018年の秋に片山さつき大臣と有識者の中で『スーパーシティを創ろう』という構想が生まれました。

     

    そのため、名前が似ていますが既存のスマートシティとは違う発想のプロジェクトなんです。

     

    総理主導、内閣主導の抜本的な規制整備が可能な体制

    ー 確かにスマートシティは結果的にかもしれませんが部分最適の施策になっている一方で、スーパーシティは包括的に変えなくては”いけない”ということが圧倒的な違いに感じます。

     

    スマートシティでも分野横断的な取り組みは進んでいますが、スーパーシティは個別省庁のリソースを超えて、総理主導、内閣全体で進めるものになります。

     

    余談ですが、2013年9月7日に東京五輪の開催が決定した後、2014年の成長戦略のなかに「2020年をモメンタムにした改革の加速化」というパートが入りました

     

    例えば、インドや中国は「これをやろう」というとすぐにトップダウンで動いて、2年くらいで街がガラッと変わってしまいます。

     

    人口が減るなかで日本には飛躍的なイノベーションが不可欠ですから「倍速で改革をする」ようなスキームが必要です。スーパーシティによって様々な改革が倍速で進み、チャンスのすそ野が広がっていくことが、今の日本にとって重要だと思います。

     

    ー 確かにそういうイメージです。一方で、日本は合議を重視する傾向ですよね。

     

    Publinkさんを筆頭に(笑)、民間にも政治・行政にも、熱い思いで改革に努力している人材はいますが、大きな改革のためには大量のリソースを動かさなければいけません。

     

    個々の人材の知恵や、企業や省庁のリソースを活かすためにも、スーパーシティのようなインパクトの大きい政策を、民と官が一緒になって、ゴールを定めて実現する仕組みが必要です。

    そのため、繰り返しになりますが総理主導、内閣主導での機動的で一貫した体制が重要です。

     

     

    スーパーシティの選定エリアになるために必要なこと

    ー 実際に「どのエリアが選定されて、どのように民間企業が関わるのか」は、自治体も民間企業も非常に関心ごとだと思います。選定基準のようなモノはあるのでしょうか。

     

    スーパーシティ構想は本当に大きな構想で、それを主導することになる自治体には強力なリーダーシップがないと達成し得ないということがあります。

    また、根本から都市構造が変わることはもちろん、個人情報の管理や帰属の課題がありますので、住民への影響を無視することはできません。
    選定自治体には、住民の合意形成を促進し、実現することができる推進力が求められます

     

    ー Google社のトロントでの取組も住民からの声を集めているようですね。内閣府の視察資料を見るとポストイットで集めたり、、、再開発を巡って現地の人権団体の反発もあると一部報道ではありますが、この合意というのは何か決めごとがあるのでしょうか。

     

    引用:「スーパーシティ」構想にかかる各国現地視察等 報告からトロントについて抜粋

    ~引用:「スーパーシティ」構想にかかる各国現地視察等 報告からトロントについて抜粋~

     

    国として住民合意について「こうしなさい」と押し付けることはなく、手続きについては各自治体のやり方次第ということで議論されています。

     

    それと、他の政策も一緒ですが、住民にわかりやすく、透明性を持って進めることが重視されています。

     

    あとは、やり始めて3年で終わりましたという訳にはいきませんので、民間・自治体の双方が長期的に構想を発展させていく責任を持つ、ということが問われると思います。

     

    ー 率直に言って、よく聞きますね。やり続けた手前やめられずに2-3年やって、何とか国から補助金を使って進めるんだけど、何も成果らしいものもなくフェードアウトするみたいな。

     

    自治体が本気でなければ、民間企業も本気で付き合えませんよね。

     

    3年でフェードアウトするプロジェクトにどれだけ力を注げますか、という話です。一方で参画する民間企業の本気度も住民から問われます。

    50年、100年のヴィジョンとソリューションがあるべきだという議論なんだと思います。

    例えば、CO2を減らす、海に流れるプラスチックを減らす、今まで様々な理由で満足に働けなかった層が働ける、そういったグローバルアジェンダの解決だったりですね。

     

    ー ちなみに、先端技術を持った企業のコミットが必要不可欠ですが、国外の企業の参加は見込んでいますか。

     

    そうですね。海外企業を参画させるというのはそれ自体が目的ではありませんが、あり得ます。

    また、海外企業の技術・手法を日本の企業が取り込んで日本の成長力につなげるということも大事だと思います。

     

    ー もし、「選ばれたい!」と思ったら自治体や企業はどのようにしたらよいのでしょうか。行動というよりは、在り方に近いのかもしれませんが具体的に伺わせてください。

     

    実際に”案件”を動かしてしまうことだと思います。
    このエリアはキャッシュレスで、この道からこの道まで自動走行の実証をやって、データを利活用してこんな結果が出ている、、、といった。

     

    そして、それには自治体が住民の支持や合意を得て、先進的な取組を事業者がしやすい環境を創り、呼び込むことですね。

     

    ー ある地域の取組で住民説明や説得を民間企業にほぼ丸投げした、、、と丸投げされた企業さんに先日お会いしましたが、それではダメという訳ですね。

     

    住民とのコミュニケーションがシッカリと出来ているということが自治体のリーダーシップであり、スーパーシティの要件で、案件を動かして効果を出すことが選定理由としての根拠になるわけです。

     

    スーパーシティと既存の規制緩和との大きな違い

    ー 結果的にどう国内の成長力に寄与するかが重要、ということですね。近視眼的な質問で強縮ですが、スーパーシティに選定された場合に分かりやすいメリットはあるのでしょうか。

     

    インフラ・技術整備の支援策は関係府省で検討されると思いますが、大きいのは規制緩和ですね。

    (※編集部追記:取材後の2019年8月11日に翌年度予算の概算要求にて、スーパーシティ整備推進事業に7億円を計上していると報じられた)

     

    自治体や企業から規制改革要望を政府に上げるは多々ありますが、スーパーシティは国家戦略特区のひとつの形態です。

    違いとして大きいのは、自治体と企業がスーパーシティの事業計画を作る過程に内閣府も加わり、規制改革を含めて事業内容全体を一体的に検討することです。

     

    国家戦略特区諮問会議等の場によって、各省の検討が同時・一体・包括的に進むようになる。内閣としての意思が示されれば改革は加速します。

    以前の特区制度ですと、自治体側がそれぞれの役所を回らなければならない。
    例えば、公園で何かやりたいという場合に国土交通省を回らなければならないし、総務省を回らなければならないし、ものによっては経済産業省とか色々な役所を回らなければならない。

     

    この既存の手法では各省庁にまたがる課題が生じた際に非常に動きが鈍化したり、本質的な解決に至れないケースがあります。

     

    民間側の立場で説明しましょう。
    A社 or A自治体が、ある省に規制改革要望を上げても、その省はそれを受け入れる義務はないわけですね。動くかどうかは分からない。
    ですが、スーパーシティのプロジェクトとして、A社 or A自治体の規制改革要望を内閣府が受けた場合、内閣府側には調整をし、説明をする責任が生じます。

     

    ー 規制緩和については「どうすれば有効的な働きかけをできるか」は個別事業者にとって、横断的な課題が発生した際の「各省の三すくみ的構造による停滞をどう解決するか」は各省にとっても悩みの種でしたが、その懸念が大きく緩和されるのですね。

     

    関係大臣との調整については、国家戦略特区諮問会議が意思決定機関として存在しており、そこの議長は総理であり、その場で一気通貫に審議がなされます。

     

    ただ、一般法を上書きは出来ませんので、自治体側で規制改革要望を上げる際はそれによって生じるリスクの代案を示したうえでの議論は必要になってきます。

     

    ~編集部にて取材をもとに制作~

     

    ー 最後に、間中さんから正にスーパーシティのようなイノベーションを起こそうとする方々へメッセージを頂ければ嬉しいです。

     

    ゴルバチョフ氏がソ連を解体したときに「改革者は不幸である」という言葉を残しました。

    ですが、いまはアイディア一つで様々なことが容易になっていて、変化が確実に来ています。

     

    私は、「この国の権力はアイディア」だと思っているんです。

     

    Publinkさんの周りには情熱あふれるアイデアパーソンがいっぱい集まっていて、
    栫井さんが何らかの方向性を打ち出すと、みんなが自然に動いてしまう(笑)。

    それこそが国を作るパワーなのだと思います。

     

    そうして良いアイディアを持っていれば、仲間が集まり、新しいことができる。社会が変わる。

    そのサイクルがうまく育っていくためには、情熱的なアイデアマンに伴走するパートナーの存在が重要です。ビジネスと政策の双方を動かすことができ、社会変革への情熱に溢れる人材へのニーズはますます高まります。

    いま取材をして頂いているPublinkさんも官民連携の実績を蓄積していて、情熱に溢れるパートナーのひとりですね笑

     

    そうやって、アイディアを持つ人が実現する手段を得て、社会を変えていくことができる世の中にもっとしたいですね。

     

    詳しく知りたい方はこちらもチェック!!

    ・国家戦略特区域諮問会議
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/shimonkaigi.html

    ・「スーパーシティ構想」の政府の公開しているムービー
    https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg18861.html

     

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